tatzmiki (タツミキ)

タツ・ミキは、最も古い歴史を持つ染料のひとつであり、地球上の様々な地域で使われてきた植物由来のインディゴ染料を自由自在に使いこなすアーティストであり、その文化の多様性の素晴らしさを人々に伝えるメッセンジャーであり、またインディゴ植物の農地拡大を推進するアクティビストでもあります。ここではアーティスト、タツ・ミキが世界各地に数多く存在している天然染料の中でも最高級と目される、発酵インディゴ染料を使い手染めした作品をご紹介します。

"発酵"する染料

ワイン、シャンパン、味噌、納豆など発酵食品は種類も豊富で大変よく知られています。近年では、発酵その健康効果についての情報も耳にする機会が増えました。でも、食品以外に発酵する染料というものが存在することをご存知の方はまだ少ないのではないでしょうか。ミキが作品制作に使用するのは、まさにこの発酵する染料なのです。100日ほどかけて発酵させたタデの葉を天然の木灰を用いてさらに発酵させるなど、発酵パワーをフルに活用することで、生命力溢れる、艶やかなミキのインディゴブルーが生まれます。
草木染めというと赤なら赤い染液、青なら青い染液の中に漬け込んで染めるものと思われがちですが、インディゴの場合はそうではありません。実際の発酵する染液は緑がかった濃い茶色で、そこに布を浸した後、外に出した瞬間に色が表れはじめます。それは酸化、すなわち空気に触れることで色に変わる染料なのです。従って、色の濃さは染料に浸す時間の長さよりも、生地を空気に触れさせる頻度、つまり染料への出し入れの回数に強く影響を受けます。ただその一方、染料は微生物が発酵活動する生命体なので、あまり短期間に出し入れしすぎると微生物の活動が弱まり、結果として色が出なくなってしまうので細心の注意が必要です。

色の名前

ミキはインディゴが出す色艶を8段階に分け、それぞれにフランス語で名前を付けています。色が濃くルビー色の強く出ているものほど高価になります。濃い方が染める手間もかかり、インディゴの含有量も多くなるためです。特にこのルビーは発酵が強い時にしか表れない特別な色であるため、とても貴重です。
例えばデビュは一回染めのブルー、ヴィクトワールは概ね70回染めを繰り返すことで生まれる豊潤なパープルのことです。色が濃いほどUVカットや抗菌作用などの効力も強くなると言われています。発酵染料の生み出す色は植物の種類や原料のでき、染料の発酵具合など、様々な要因によって微妙に変化するため、まったく同じ色というものは存在しません。それはワインのテロワールに例えると分かりやすいかも知れません。生産地や生産年、生産者の個性、使う種の種類、開けるタイミングなど多くのな要素が交わりそれぞれのワインの味を特徴づけているように、ミキのインディゴ作品はそのどれもが世界で唯一の色艶を奏でるオンリー・ワン・ブルーなのです。

No 名前 染め回数
1. Début (デビュ) 個性際立つフレッシュ・ブルー 1
2. Brise (ブリズ) そよ風のように優しいジェントル・ブルー 2-
3. Jeunesse(ジュネス) 青春のきらめき、永遠のエターナル・ブルー 約15-
4. Aube(オーブ) ほのかにルビーの差すミステリアス・ブルー 約30-
5. Amour(アムール) 恋する大人のための魅惑的センシュアル・ブルー 約50-
6. Univers(ユニヴェ) ブルーとルビーが溶け合うコスミック・パープル 約60-
7. Victoire (ヴィクトワール) サムライに愛されたウイナーズ・パープル 約70-
8. Infini(アンフィニ) 無限へと続く究極のグラン・パープル 約80-

1〜3:ブルーが段々と深まる。
4〜5:ブルーに加えてルビーが見えるようになる。
6〜8:ブルーとルビーが交わり深いパープルへと向かう